面白さとは?
今まで作品のストーリーの組み立てに必要は要素について考えてきました。
ログライン、メインテーマ、キャラクター、 ストーリーの前提条件など……。
ここまでやってくると、これからは面白いストーリーを作る番です。
しかし、ここまで来て新たな質問を投げかけなければなりません!
「面白い物語とは何ですか?」
今回は「面白さ」という抽象的な感覚について話してみようと思います。
レフ・トルストイの傑作「アンナ・カレニナ」の最初の文章はこう始まります。
「幸せな家庭はみんな同じ理由で幸せだが、不幸な家庭はそれぞれ異なる理由で不幸だ。」
この言葉は驚くべきことに作品にも当てはまります。
面白い作品は同じ理由で面白いですが、面白くない作品はそれぞれ異なる理由でつまらないです。
考えてみましょう。
我々が楽しく読んだ少年漫画である「ドラゴンボール、スラムダンク、ワンピース、ナルト」などの名作は読んでる最中にワクワクし、次の展開を見たくなります。
ラブコメなら「かぐや様は愛をしたい、古見さんはコミュ症です、僕の心のヤバイやつ」などは自分の恋愛細胞を刺激し、眠った恋愛細胞さえ起こしてくれます。
一方、面白くない作品は?
物語が陳腐、ストーリーが散漫、キャラクターが魅力がないなど
様々な理由でつまらないと感じます。
しかし、すべての作家は面白い物語を作るために頭を抱え、必死に作品を作ります。
なぜこのように面白い、つまらないと評価がに分かれるのでしょう?
いろんな理由があると思いますが、筆者はこれ一つに尽きると思います。
それは「サスペンス」です。
面白さ=サスペンス?
ハリウッドのスター監督でスリラー映画の基層を作ったと言われる名監督「アルフレッド・ヒッチコック」はサスペンスをこう例えました。
この話だと観客はただ驚くだけです。
しかしポーカーが繰り広げられるテーブルの下に爆弾を仕掛けるのを見せて置くと
観客は「今はポーカーをやってる場合ではない。後少しで爆弾が爆発するんだよ!」と叫びたい気持ちになります。
こういう感情がサスペンスということです。」
頭の中で状況を考えてみましょう。
ポーカーをやっている最中に突然爆弾が爆発します。
これは面白いですか?
観衆はただ突然爆弾が爆発して「驚く」だけになります。
これは「びっくり」であり「面白さ」ではないです。
作家は観客に楽しんでもらいたい、ワクワクさせたい。
観客に楽しんでもらいワクワクさせるにはどうすればいいのでしょうか。
作家は観客の楽しみのために劇的な場面を「演出」しなければなりません。
演出の例
しばらく他愛のない話をしながら4人のプレイヤーがポーカーを打つ。
騙しあいの最中、ついに優勝者が現れる。
「俺が勝った!」
テーブル下の爆弾は刻々とタイムリミットに向かって時間が流れている。
このままゲーム場を去ろうとする勝者、突然敗北したプレイヤーが口を開く。
「待って!!まだゲームは終わってねーんだ。」
この演出の例からアルフレッド・ヒッチコック監督が言ったシーンでのサスペンスが何なのか考えてみましょう。
このシーンの主人公は4人のプレイヤー。
互いにポーカーで勝ちたいという目的がある。
しかし彼らの目的を妨げる要素があります、それはまさに「爆弾」です。
それではもう少し考えてみましょう。
どうして爆弾が脅威的な要素になったのか?
理由は一つです。
爆弾は「主人公の目的を妨げる装置」だからです。
この爆弾こそサスペンスそのものと言っても過言ではありません。
そして私はこのサスペンスをこう定義します。
サスペンスとは「絶望」だと。
ドラゴンボールはサスペンスの最高峰
もう少し簡単な例として、有名な漫画の名シーンで考えてみましょうか。
ドラゴンボールナメック星編を見てみましょう。
ドラゴンボールナメック星編 は、鳥山明先生のドラゴンボールの中でも一番人気があった物語であると思います 。
その人気の理由として孫悟空と仲間の目的を妨げる「絶望的」な要素が散在しているからです。
一つ一つ考えてみましょう。
主な人物は孫悟空と仲間とフリーザー軍団になります。
みんなの目的は簡単で同じです。
「地球から消えたドラゴンボールをナメック星で探すこと」
しかし、アルフレッド・ヒッチコック監督が言ったように
主人公たちがが「ただ」ドラゴンボールを見つけ出せ手に入れれば面白くないはず。
そのため鳥山明先生は主人公たちに幾度なく「絶望」を与えます。
- ナメック星にある「ドラゴンボール」とドラゴンボールを唯一扱うことができるのはナメック最長老だけ
- フリーザの最強の戦士、ギニュー特戦隊
- 宇宙の帝王、フリーザ
- 孫悟空の不在(地球から遅れて来ている孫悟空)
仲間たち(クリリン、悟飯)は、ドラゴンボールを集めるために
ナメック最長老に会わなければならず、ギニュー特戦隊とフリーザと戦って勝つか逃げるしかない。
だからナメック星のエピソードは立て続けに仲間たち(クリリン、悟飯)を絶望に叩き込みます 。
圧倒的なギニュー特戦隊とフリーザに仲間たち(クリリン、悟飯)の力では勝てず
ドラゴンボールを扱える 最長老は寿命が尽きて死んでしまいます。
孫悟空はまだナメック星に着いていない。
悟空の不在のまま仲間たちは決して勝てない戦いを繰り広げます。
しかし圧倒的な戦力差を埋めることができず
悟飯 、クリリング、ベジータは敗北し絶望の中にいます。
ドラゴンボール完全版19巻から抜粋
そのすべての絶望が集まった瞬間。
嘘のような奇跡が起きます。
ドラゴンボール完全版19巻から抜粋
孫悟空の到着(登場)です。
様々な絶望が一箇所に集まった瞬間、主人公「孫悟空」の登場ですべてのサスペンスが極大化されます。
いままでの絶望に勝てるだろうという期待感が膨らむからです。
すべての感情を解消するカタルシスさえ感じられます。
その後続く超サイヤ人の伝説という流れから、フリーザの3段変身
孫悟空一行の敗北。
ナメック星の崩壊。
幾度なく絶望が孫悟空を絶望の中に押し込みます。
そしてその絶望の最高潮でクリリンの死。
再びすべてが絶望に陥る瞬間
孫悟空は超サイヤ人に「覚醒」する。
ドラゴンボール完全版22巻から抜粋
このように、ドラゴンボールナメック星編はサスペンスが多く装置され、それが完璧に噛み合って素晴らしい物語を作っています。
逆にサスペンスが欠けていたらここまで面白くできなかったとも言えるでしょう。
だから作家たちは主人公にどんな試練を与えるか、
そしてその試練を通じて読者に期待感を高ぶらせ、主人公がどう絶望の中で立ち直らせるかと考えなければいけません。
最後に
物語の中の世界は主人公に親切にすべきではありません。
主人公は繰り返される絶望に直面し、その中で主人公は自力で絶望を乗り越え、自分で立ち上がらせるべきであります。
サスペンスは作品に面白さを引き起こす非常にとても重要な要素です。
自分の作品が面白くないと感じるなら
どうすれば主人公に「絶望」を与えるか悩んでみましょう。
愛と希望を語るには、それだけの絶望と恐怖を与える必要があるのです。
まとめ
- 面白くするためには主人公を絶望に追い込むべき。
- その絶望を克服できるという期待感を作る。